パッシブファズ(ダイオードクリッパー)の自作
2021/09/28
【はじめに】
当ブログの内容における未検証項目につきまして、誤りがある点をいくつかご指摘頂いています。
誠に申し訳ないのですが、しばらく内容修正に取り掛かれないうえ、ブログを閉鎖することも今のところは考えていないので、内容に関しては「間違っている箇所もある」と思って頂けると幸いです。
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ファズはディストーションペダルの中でも歪みの荒々しさが激しいエフェクターという印象です。
ファズと言われて想像するのはやっぱりジミヘンでしょうか!?
激しいファズを作るとなるとパッシブでは無理ですが、「理論的なファズ」っぽい物なら作成可能ですw
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Contents
用意するもの
- ダイオード×2
- 線材
- フォンジャック×2
- ケース
- DPDTスイッチ
ダイオード
音の波形をクリップする(切り取る)為に使用します。
ショットキーバリアダイオードやゲルマニウムダイオードのように順方向に電流を流せる電圧が低いものがいいです。
線材
単線でも撚り線でも構いません。
フォンジャック
モノラルスイッチなしでOKです。
ケース
なんでもOKですが、なるべくアルミダイキャストケースがオススメです。
他のケースを選んだ場合はノイズ対策とGNDあたりの取り回しを気にする必要があります。
DPDTスイッチ
今回はLEDによるON/OFF表記をつけないのでDPDTがあればトゥルーバイパス仕様で作れます。
※後にLEDを付けてアクティブに・・・というのを考えて、3PDTを用意するのもアリ。
回路図と説明
INから入った音の信号が、OUTに抜けるまでの間に2つのダイオードによってGNDと繋がれています。
こうすることで、ある電圧以上の信号だけGNDに流れていくわけです。
結果、GNDに流れなかった部分の信号=切り取られた音の波形だけがOUTから出力され、ファズのような効果を生むことになります。
ダイオードの特性
ダイオードは電流を一方向にしか流さない特性があります。
但し、「順方向電圧」といって、ある程度の電圧が加わらないと電流がほとんど流れないという性質もあるのです。
水圧が弱いと開かない水門があったとして、そこに強い水圧の水が流れこんだら開くイメージでしょうか。
順方向電圧は通常のシリコンダイオードで0.6~0.7V、ゲルマニウムダイオードで0.1~0.3V、ショットキーバリアダイオードで0.2~0.4V、LEDで2V前後と決まっています。
つまり順方向電圧が0.1のゲルマニウムダイオードであれば、0.1V以上の電圧を持つ電流のみが通過できるということです。(厳密には少しは抜けるみたいですが。)
ダイオードクリップ
上の回路図のINから入った電流は、順方向電圧によって高い電圧の部分だけがダイオードを通ってGNDに落ちていきます。
という事は、残った低い電圧の部分だけがOUTから出てくるわけですね。
例えばこんな感じの±1Vの交流の入力があった場合。
順方向電圧が0.7Vのダイオードが回路に入っていたらどうなるでしょうか?
入力信号が-1V~0.7Vまでの時は電流が流れることが出来ません。
0.7V~1Vまでの時にだけ電流が流れます。
上の回路図ではダイオードがGNDに繋がっていますので、0.7V以上の部分はGND側に流れることができ、ダイオードを通過できなかった0.7未満の部分だけが出力に現れるわけです。
出力波形は山の上側が少し角ばって潰れた形になっています。
このように波の上(または下)を削り取ることを「クリップする(させる)」と言い、その役割を担うダイオードを「ダイオードクリッパー」と呼んだりするのです。
逆向きのダイオードで負の電圧もクリップ
音は基本的に0Vを中心に±が揺れて伝わります。
そのため、下側の山(谷?)もクリップさせてあげることでより荒々しいファズ音になる(はず)わけです。
回路図ではもう一つ、アノードがGNDに繋がっているダイオードがありますよね。
これが0Vから-1Vの波形における、-0.7Vよりマイナス方向に大きい電圧をGNDに流す役割を果たします。
これで上下ともカックカクになった波形ができましたね。
カクカクの波形こそが歪んだ音ですので、こうやってクリップさせることで音を”意図的に歪ませる”ことができる・・・というわけです。
非対称クリップについて
クリップ回路はさまざまな歪み系エフェクターに使われていますが、真空管のような歪を得るために「非対称クリップ」を用いているものがあります。
たしかBOSSのOD-1とかがそんなんだった気がする。
非対称っていうのは「波形の上側と下側のクリップ量を同じにしない」、ってことです。
やり方は簡単で、片方側のクリッパーにダイオードを直列に2つ繋ぐだけ。
↑実際のエフェクターの回路でもこんな感じのをよく見ることになると思います。
こんな感じにすると、上側の山がマイルドに、下側がカックカクに・・・みたいな上下非対称の波形が作れるんですね。
トランジスタやFETがクリッパーになっていることも
ちなみに、トランジスターやFETも半導体を組み合わせたものなので、ダイオードのように順方向電圧が存在しています。
そのため、これをクリッパーとしている回路もあるのです。
レイアウト
さて、パッシブファズ(ダイオードクリッパー)のレイアウト図はこんな感じ。
箱を裏からみたイメージで描いたので、左がINPUTジャックになっています。
紫色のラインが入力ライン~エフェクトON時の経路です。
※もしかしたらINの何も繋がっていない端子を緑色のラインと繋げてあげる必要もあるかも。
エフェクトON時
エフェクトON時はDPDTスイッチの中央と右側がショートすると仮定しましょう。
入力(IN)から入った信号はスイッチの中央上段の端子から右上の端子に流れます。
また、スイッチ右上の端子と右下の端子もショートしているため、ここにも入力信号が現れるはずですね。
さらにスイッチ右下の端子と中央の端子もスイッチによってショートしているので、入力信号はそのまま出力(OUT)にも運ばれていきます。
そのため、ダイオードさえなければ、入力信号がそのまま出力信号に表れてくるはずです。
ダイオードクリップ部
さて、この入力から出力に繋がるラインにはそれぞれ左のダイオードのカソードと右のダイオードのアノードにも繋がっています。
無事ダイオードを通ることができた信号(ある程度の電圧以上のヤツ)はアウトプットジャックのGNDに短絡されているため、シールドケーブルのコールド、またはエフェクターケースを通じてアースへ落ちていきます。
結果、GND側に流れることができなかった入力信号だけが出力側に現れる・・・ということですね。
エフェクトOFF時
エフェクトOFF時にはスイッチの中央上段に入力された信号が左上の端子を経由して左下の端子、中央下段の端子、OUTPUTジャックへと流れていきます。
ダイオードは完全に切り離されるため、トゥルーバイパスです。
おわりに
音が出たらOKです。
歪んでなくても完成としてくださいw
実は僕もしっかりとは試していません・・・。
あくまで「理論上のパッシブファズ」といった感じで。
・・・というのも、音は耳にわかるほどの変化はないかもしれないのです。
なぜなら、基本的にエレキギターの出力電圧が非常に弱い(ハムバッカーで0.2~0.6V)ため、それだけではダイオードの水門を開けられない可能性が高いわけですな。
(つまり入力信号はそのまま全部出力に出てきちゃう、ってこと)
たとえばこの回路の前段に電圧を上げるブースターをかます、などすればクリップを実感できるかもしれません。
有名なランドグラフのオーバードライブのように、クリップ部分にトグルスイッチを使って「クリップあり/なし」を切り替えられるようにしてみると面白いと思います。
また、順方向電圧が異なるダイオードをいろいろ試してみてもいいですよね。
エフェクターの中には温度によって体質が変わってしまうゲルマダイオードを使っているものなんかも多いですし、MarshallのガバナーなんかはLEDでクリップしていました。